タイ山岳民族の現状

 

タイには山岳民族あるいは高地民、山地民と呼ばれる少数民族が北部山間部を中心に住んでいます。カレン、リス、ラフ、アカ、ヤオ、モンなど、大別して10種の民族が現在では100万人と言われています。

 

20年前には55万人といわれていましたから、20年間で2倍近く人口が増えたことになります。元々タイの住民ではない後住民がほとんどで、この100年間に山伝いに、あるいは川を越えて、政治的、経済的な事情によりミャンマー、ラオスから入ってきた人々がほとんどです。現在でも同じ民族の人々が中国、ベトナム、ラオス、ミャンマーで暮らしています。それぞれ独自の伝統文化、言語を持ち、特にその民族衣装はそれぞれに特徴があり、華やかです。

 

焼畑移動耕作によって、農業を営んできた人々で、陸稲、トウモロコシ等の他、アヘンの原料であるケシを栽培して生計を立ててきた人も多かったのです。もちろん現在ではケシの栽培も森林伐採と山焼きによる耕作地の開拓も禁止されています。

山の人々は認められた耕作地で、自給用の米やトウモロコシの他、豆、コーヒー、茶、果物、しょうが、野菜などの換金作を作り、生計を立てています。

 

しかし、重労働に見合わぬ、不安定な収入で、まだまだ貧しい家庭も多く、山を離れて出稼ぎに行く人も増えてきました。まだ国籍を持たない人が20〜30%を占め、タイ語が不自由な人も多いため、人身売買の被害にあうケースもあります。

 

山の村に電気が引かれ、山道の整備がすすめられており、保健所ができたり、小学校に中学校が併設されるところも増えてきました。それでも、まだ村に学校のないところもあり、小さい頃から親元を離れ、ふもとの町の寮生活を送る子供たちも多いのです。

民族の伝統文化を受け継ぐ機会を持たない子供たちや、ふもとで仕事を転々として、自分を見失う若者も増え、山岳民族としてのこれからの生き方が問われる時代になったと言えるでしょう。

 

山岳民族の紹介

アカ族(AKHA)

 

最北県チェンライ県で最も多い民族。ミャンマーからの移住が現在も続いています。他の民族と比べて伝統文化や習慣による制約が多く、標高1000m前後の高地に住んでいます。以前男性は祖先の名前を50代にわたって記憶しました。

カレン族(KAREN)

 

タイ山岳民族の中で一番多く、半数近くを占めます。ミャンマー軍を相手に独立戦争をしていたグループもありますが、タイでの歴史も比較的長いです。山の麓の川周辺に集落を作り、森の中で竹の子やきのこを採集するのが得意です。森と共に生きるというイメージが強く、他の山岳民族と違う母系家族で元々は婿取り婚でした。

ラフ族(LAHU)

 

アカ族に次いで貧しい人が多く、ナタ同様に現在でもミャンマー側の親戚と交流のある人が多い。勇猛果敢な狩人として名をはせています。女性も川魚採りが上手で、若い人もスポーツマンが多い。民族のグループで固まる傾向もあります。

モン族(HMONG)

 

100年ほども前からタイに住むグループと、ラオスの戦争を逃れて難民としてキャンプ生活をしたグループがあります。物腰は柔らかでも、意思的で統率がとれたイメージがあり、兵士としても優れていたと聞きます。歌うように話します。

リス族(LISU)

 

アカ族、ラフ族同様にチベット、ビルマ語系の言語を持ち、顔立ちのはっきりした美男美女が多いと言われています。6つの民族の中で一番大きい声で話します。以前は生まれた順で名前が決まっていました。

 

 

ヤオ族(YAO)

 

日本の研究者による初期の報告書で見られるのがヤオ族の村です。中国文化の影響が最も強いと言われます。山岳民族はもともと文字を持ちませんが、ヤオの人々は漢字で自らの言葉を記したと言われます。儒教的生活習慣に抵抗を示す若い女性も増えてきました。